前回のブログでアレクサンダー・テクニークを一言で語るには難しいと言いましたが、実は創始者のFMアレクサンダーさんがアレクサンダー・テクニークをある一単語を用いて表現されています。
それは何かというと
「Readiness」です。
Readinessは"Ready"の名詞形で「準備」という意味です。
日本語で「準備」と訳す英単語にPreparationというのがありますよね。
どちらも訳すと同じ「準備」なんですが、その意味は微妙に違うわけで、アレクサンダー・テクニークはPreparationではなく、Readinessなんです。
どんな風に違うかというと、
Preparation(準備)は、何か特定のものに対する準備、という感じです。
例えば、パーティの準備とか、明日のプレゼンの準備とか…
一方、Readiness(ready)というと、何かに対してというよりは、自分自身の準備が整っている、そんな感じでしょうか?(英語は得意でないので、深く述べるのは避けておきますが・・・苦笑)
アレクサンダー・テクニークで表現している「Readiness」の例として、師匠の一人ブルース・ファートマンはこんな風に表現します。
例えば、合気道。
四方八方に敵に囲まれた状況で、自分の目の前にいる人だけに対応しようと準備(Prepare)していたら後ろからの相手にやられてしまいますよね。
どの瞬間でも、どの方向からの攻撃にも対応できるような状態にあることをReadinessと表現できます。
あるいは、馬術競技の馬。
馬は騎手が手綱を通して送ってくるメッセージに瞬時に反応し前にも後ろにも左右にも動くことができる、そんな状態のことを言います。
つまりReadinessとは
ざっくりした表現でいうと、身体が力んでいない状態、というのは想像いただけると思います。
力みがあればあらゆる方向に即座に反応することはできませんから。
ただ、いわゆる“身体”が力んでいないだけでは、四方八方に、いつ何時、対応できるわけではありません。
五感が研ぎ澄まされていて、意識(注意)が広がっている、そして静まっている、あるいは目覚めている、そんな状態なんだと思うのです。
つまり、単に身体の緊張度合いだけを語っているのではないということです。
単に身体の緊張を手放して楽になったわ、というのではリラクゼーションでしかありません。
でも、アレクサンダー・テクニークが本来目指すところはリラクゼーションではなくReadinessなのです。
ちなみに、
フランス人のアレクサンダー教師、マリー・フランソワーズは
Prepare for nothing, ready for anything.と表現しました。
もう少し丁寧に言えば、こういう事なんでしょう。
Prepare for nothing particular, ready for anything may happen.
つまり、何か特定のもの(事)に対して準備(Preparation)するのではなく、起こりうるあらゆることに対しての準備(ready)ができている状態、それがアレクサンダー・テクニークで目指すものなのかなと。