今日は、選択肢があることによる自由と不自由さ、そして決めるということに付随するパワーと不自由さについて書きたいと思います。
自由の定義について、あるアレクサンダー教師はアレクサンダーテクニークの観点からこんな風に表現しました。
自由とは、好き勝手自由にできることではない。置かれた状況、やってくる刺激に対して自分の反応に選択肢を見出し、その中で意識的に選択できることである、と。
なるほどな〜と思いました。
生きている上で、なんでも好き勝手できるなんてことはありませんし、理不尽な状況に置かれることもあります。でも、それに対しどう反応するかは選べる、つまり、私たちは自分で自由を勝ち取ることができるということです。
初めてこれを聞いた時、それまでの自分が自身の感じている不自由さを他人や状況のせいにして生きてきたことに気づかされました。また、理学療法士として患者さんに関わる際、患者さんに選択肢を与えることなく、これが良いこと(正しい動き・動作)として一方的に提供し、不自由さを強いていた自分の傲慢さを反省したのを覚えています。
アレクサンダーテクニークの観点における自由の捉え方に感銘した私ですが、その後、経験を重ね思ったことは、選択肢があることは自由であると同時に不自由でもある、ということです。
なぜ選択肢があることが不自由か。それは、選択肢の存在は、私たちに決めるという行為を要求するからです。そして、その決めるという行為に対し、私たちはなんらかのストレスを感じたり、エネルギーを使っているからです。
決めることができたらそれはパワーに変換され、自由を勝ち取ることに繋がりますが、決められない時のストレスやエネルギー消費は相当なるものです。だから、選択肢があるということは、時に不自由なのです。
これに関して、一つ私の経験を紹介したいと思います。
アメリカでアレクサンダーテクニークのトレーニング中のこと。様々なグループを対象に教える実践練習をする機会がありました。卒業間近だった私はもちろん教える練習をしなければいけませんでしたが、英語が苦手でうまく教えられる自信がなかった私は、師匠から「次誰が教える? 好子は?」と言われても、「いや、ちょっと…」と逃げていました。自分のためにも練習しないといけないというのは分かっていましたが、勇気が出ず教えることを決めることができませんでした。と同時に、教えないと決めることもできず、数日間、私の頭はノイズにまみれ、悶々とした気分で過ごしていました。まさに選択肢を前に決められないことによる不自由さがそこにありました。
不自由さを感じる中、10代のダンサーを対象にしたミニクラスの日がやってきました。クラスの直前に「次誰が教える?」と投げかける師匠と視線が合い、指名されました。以前同様に「いや、ちょっと…」と答える私に対し、師匠は選択肢を与えませんでした。やれ!と。
それまでは私にやるかやらないか選択肢を与えていた師匠でしたが、その時の師匠の言葉や表情から、私に選択肢がないことを感じとりました。そして、その瞬間、私は潜在的に?、受動的に?教えることを決め、自身のエネルギーは決断そのものではなく、教えることに向かいました。もちろん教えることに対する緊張や不安はありましたが、やるしかないと決断によるパワーがそこにありました。
この経験に関して、いまでも師匠にとても感謝しています。決めることが苦手、チャレンジする勇気がない私を知っているが故に、師匠は選択肢を与えないことで私を不自由さから解放し、前に進む後押しをしてくれたのだと思います(そういう師匠です)。
今思うと、教えると言っても、ほんのわずかな時間のわずかなアイデアを伝えるだけでしたが、あの時の経験がなかったら今の指導者としての私はなかったと思いますし、教える以上に決断パワーや選択肢があることの不自由さと自由さを身をもって知った良い経験でした。
ということで、選択肢があるだけでは自由ではなく、時に不自由なのだと思います。大切なのは決めること。決めることによって初めて自由を獲得でき、先に進む際のパワーを見出せるのだと思います。
インターネット等の普及で情報が溢れていることに加え、日本は世界の多くの国に比べ裕福で平和がゆえに沢山の選択肢が与えらています。ありがたい反面、そこにある不自由さとどう向き合っていくか、どう決断していくかが、人生の豊かさ・自由さ(不自由さ)、心身の健康に大きく影響してくるんだろうと感じている今日この頃です。
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【余談】
今回のメルマガで話題に出た師匠のロビンが11月に来日予定です。もしかしたら、師匠の楽しい企画をご案内できるかもしれませんので、お楽しみに♪
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